総合庁舎(本館及び議会棟)は、当時、水害対策ならびに駐車場利用を考えて1階をすべてピロティとして1962年に建設された。
その後、十勝沖地震ならびに宮城沖地震を教訓として、1981年に1階ピロティの柱を鋼板により補強している。
さらに、1995年の兵庫県南部地震を契機に「防災体制緊急見直し検討委員会」を設置し、庁舎の耐震診断による検討の上、次の観点から補強の必要性を判断した。
1) | 耐震診断調査の結果、構造耐震指標で安全とされる値を下回る部分があった。 |
2) | 本庁舎は、防災時において、防災拠点としての役割を持つ。 |
3) | 将来の利用計画上から見ても、財政状況や立地条件等から新しく立替えることは困難であり、現庁舎を引き続き利用することを考える。 |
そこで「防災対策推進委員会」を設けて、次の様な耐震補強に当たっての基本的な考え方に基づき、構法の検討を行った。
1) | 安全性−補強目標値をis=0.72とする。 |
2) | 機能性−補強後も事務室等、現在の空間機能全般を確保する。 |
3) | 施工性−仮移転をせず、居ながら施行を行う。 |
4) | 工事費−ローコスト。 |
その結果、ハニカムダンパ付鉄骨ブレースを用いる制震構法が最適であると判断し、議会報告の後、
1997年6月より設計に入り1998年3月には耐震改修促進法に基づく「計画認定」を受けて6月より補強工事に着手し、現在約2/3の工程を終えている。。(補強および施行計画)
補強に当たっては、大地震時に防災拠点としての役割が果たせるよう、現行基準法並の耐震安全性を確保し、
震災時においても再使用可能な中破程度の損傷にとどめることを目標とした。
また、補強後も現在の空間機能を損なわず、さらに仮移転をしないで「居ながら工事」を行う必要から、建物内部には補強構面を設けないばかりではなく、
工事中の住民サービスや庁舎機能を極力低下させない様にした。
補強計画の概要は次の通りである。
1) | 2、3階の柱に鋼板を巻いて補強し、建物の靭性を確保した。 |
2) | 現在エキスパンションジョイントによって建物はコの字形連結されているが、梁をボルトで緊結し、建物を剛結一体化することによって、補強構面を外周部四隅に設置した。 |
3) | ハニカムダンパを用いた制震補強を採用することによって、補強構面の減少と外周部での補強を行った。 |
4) | 本館、議会棟ともに、制震補強加構の下部には杭と基礎を増設した。 |
施行計画においては、「居ながら工事」であることから、来庁者へのサービスを低下させずに行政サービスを継続させるため、
全行程(21か月)を3期に分け、さらに平日工事(杭、基礎工事、外周部制震補強工事)と土日工事(内部作業となる柱鋼板巻工事、エクスパンションジョイント剛結工事)を組み合わせた。
また、各種の仮設工事によって来庁時の不快感に配慮している。
1) | パネルやシートによって外周部の防音対策をはかると同時に、防音パネルを利用して来庁者への動線誘導サインを示す視覚的効果や補強工事完成図、写真コンクールの作品を展示する等ギャラリー効果も兼ねている。 |
2) | 室内には工事用間仕切壁を設けて工事エリアとの分離と同時に騒音、粉塵、防犯・安全対策をはかっている。 |
3) | 点字誘導ブロックや手すり等の設置を行っている。(制震補強構法) |
厚さ20m/mの鋼板にハチの巣状の開口を有するハニカムダンパと称する、エネルギー吸収装置を構造体に組みこむことによって、強度を増すと同時に建物の地震力を低減する構法である。
ハニカムダンパは鋼材の強塑性を活かして地震エネルギーを吸収しやすい形状となっており、次のような特性を有している。
1) | 成分調整と製造管理によってバラツキのない特殊鋼材であり、大きな塑形変形を有する。 |
2) | 今までの実験ならびに解析結果から地震後も残留変形はわずかで取りかえ不要であると言う信頼性が確認されている。 |
3) | 特殊塗装により、メンテナンス・フリーである。 |