韓国ソウルで開催されたICWES13に2005年8月26〜29日まで参加した。会場の梨花女子大学(Ewha Womans Univ.) は,地下鉄の駅から近い広大なキャンパスであった。日本では考えられないような起伏のある敷地の中を,坂や階段を登ったり下りたりしながら会場に向かった。自然の樹木を生かした構内に趣のある洋風の建物がいくつも存在する美しい大学だった。
私は女性技術士会に属しICWESは今回がはじめての参加であった。どんな雰囲気なのか不安だったが会場は明るく活気があり,特にアジアの民族衣装の方々やアフリカからのエネルギーあふれる研究者から話かけられるなど,なごやかな雰囲気であり,はじめての私でもすぐに打解けることができた。
また,日本の研究者との出会いでは,国際女性技術者科学者ネットワーク(INWES)や日本女性科学者の会(SJWS)で創立当初より活動を進めていらした先生の方々にお目にかかることができた。女性技術者や研究者が少なかったころの興味深い話を伺い,海外の研究者の方々を紹介していただき知り合いがかなり増えた。
ICWES13では,情報技術,ナノテクノロジー,バイオテクノロジー,環境技術,エネルギー技術,宇宙技術,教育と倫理,ジェンダーとリーダーシップの分野にわかれて各セッションが行われた。会議の内容は,大講演が5件,セッションごとの招待講演が23件開催され,また各分野に分かれて口頭発表やポスター発表が数多く実施された。
私は,エネルギー技術のセッションから,原子力関連の発表を中心に聴講した。原子力関連の口頭発表と原子力ワークショップの概要は次のとおりであった。
●原子力関連の口頭発表は以下の3件であった。
- 「核不拡散条約におけるカナダの歴史的背景」が紹介された。発表者が属するカナダの原子力安全委員会の役割について検討が進み,核兵器の脅威から開放されることが望まれた。
- 「低線量の放射線による生物影響確認のための実験」について韓国の放射線医学科学研究所の研究員より発表があった。低線量のマイクロビームを開発し細胞レベルの影響を研究している。細胞への影響についてモンテカルロ法を用いたコードで理論的に検討しており,今後の発展が期待されると思った。
- 「パキスタンの研究用原子炉での使用済み核燃料の特性」についてパキスタンの原子力科学技術協会の研究員より報告があった。彼女は東海村にも訪れているとのこと,核燃料の核種組成を崩壊等の現象をコード開発して予測計算をしていた。民族衣装をまとい経験豊富な研究者であった。
●原子力ワークショップ
放射性廃棄物の処分についての発表が行われ討議が行われた。国際的に原子力発電所からの放射性廃棄物の処分について検討が進められている最中でありタイムリーなテーマであった。韓国の手続きについては,韓国WIN(Women
in Nuclear)の代表や韓国原子力エネルギー財団の方から詳しい話があった。韓国では放射性廃棄物の処分地の選定について,誘致を望む地方自治体は国に申請することになっているとのこと,複数の地域で誘致申請の動きがあり,住民投票により賛成票が多い地域が最終候補になるとの説明があった。日本ではまだ処分地が決まっていない状況であり,韓国の方がより誘致活動が活発な様子がうかがわれ,日本より先に計画が進むのではないかと思われた。
最後に,自分の専門以外の研究者との交流の場として有意義であり,次のフランスで開催されるICWES14にも是非参加したいと思った。
(E.H)
以上