2006年09月15日
古民家再生
今から約150年前に建築された古民家を再生しています。
敷地約1ha、木造の農家の屋敷ですが、父子歴代の地域の名士のご自宅だったところで、ご遺族が、地域の文化向上のためにと、自治体に寄贈されました。今回の再生事業では、音楽、美術、園芸など芸術文化全般に造詣が深かった父子にゆかりのあるテーマを取り上げて計画を進めています。
2階建てだった「母屋」は、古材を利用しながら本格的に改修され、クラシック音楽のコンサートを開催できるホールとし、「離れ」は地元料理を堪能できる部屋、「茶室」はお茶会などもできる集会施設に、「長屋門」は曳き家をして改装し売店などになります。
また、著作を出版されるほど園芸に造詣の深かった息子さんが育てた花壇の跡地は、地元市民の方々が美しい花園に仕上げてくれることになっています。
地域環境の中で生まれ育った樹木が、材木に姿を変えて人々の暮らしを支え、最後にはまた土に還っていく。かつて、日本人の生活はこうした自然のサイクルに支えられていました。
現在、私たちは経済のサイクルに飲み込まれ、大量生産・大量消費・大量廃棄を当然のごとくに享受し、その結果として、地球温暖化を始めとする、危機的な地球環境問題の現状にさらされています。
自治体からの与条件として、交流施設としての機能や施設運営のアイデア、外観デザインの美しさとともに、環境貢献の視点も必要とされました。私たちは、太陽光パネルを屋根に設置した新しい施設ではなく、古民家をそのままできる限り利用して再生するという方法を選び、提案しました。このコンセプトが自治体に評価され、今回の事業に結びついたのです。
さて、2006年9月15日、その建設現場へ打合せに行ってきました。
2004年、計画を始める前の事前調査。草ぼうぼう。
ここから始まります。
写真では分かりにくいですが梁に古材を使っています。
古民家再生は、熟練・経験を必要とする特殊な技術に支えられています。基本設計の最初の段階から、専門家チームとのコラボレーションで計画・設計を進めました。
渋い色味の瓦です。現在使われているものより一回り大きい規格です。
瓦は建物に再利用できなかったので、瓦側溝や庭園に利用する予定です。
庭園に使われていた景石、束石、御影の敷石など。さすが名士のお屋敷の石。素晴らしい材ばかり。
新しく造る和風庭園、茶庭に使います。
屋敷の庭にサルスベリの古木があり、花の少ない真夏、紅に気高く咲き誇っていました。移植せず、そのままの位置に残すことができて、良かったです。
現在工事中の公共施設で、新聞などに公表されていますが、まだオープンしていませんので、具体的な名称などは、とりあえず明示しないでおきます。
投稿者 MCAT : 2006年09月15日 22:15
コメント
昨年、富田林の寺内町を、両親と訪れました。旧杉山家住宅を見ていたら、連れの方に解説していらっしゃる方がいました。父が話しに加わり、詳しくお話ししてもらったことを思い出しました。宮大工をされていらっしゃる方でした。梁の間のことや、瓦が一連になっていることや、石が素晴らしいことや、壁を塗るのに熟練を要することや、支える柱が天秤になっていることや、大工さんからできたことわざが今でも、結構、使われていること等、いろいろ教えてもらいました。昔の家には、見る人が見ると、当時の大工さんの知恵が詰まっているそうです。
投稿者 一口カステラ : 2006年09月16日 12:37
古民家の再生って、新築より何倍も手間が(手間がかかれば当然費用も)かかるのですよね。特に民家に限りませんが。
MCATさん、素晴らしいプロジェクトに携わっていらっしゃいますね。オープンの暁には、ぜひぜひ、構想から完成までの秘話など、伺ってみたいものです。
投稿者 authenticity : 2006年09月17日 23:31
一口カステラ さま
大阪府富田林市の寺内町って、まるで「時代劇のセット」のような町家が何十軒も立ち並ぶといわれているところですよね。
知らずに恥ずかしいのですが、ここの町家は、現在も実際に人が暮らしていらっしゃるのですか? それとも資料館のように保存されているのでしょうか?
ご両親と一緒に訪れたなんて、いいですねぇ。
私もたまには、親孝行しないと……。
authenticity さま
現代建築として建設するのであれば、新築の方が安くなる場合が多いです。しかし、旧家と同等の仕様で新築するとなると、再生する方が安くなる場合もあります。
もっとも、今、旧家の仕様通りには造れないことも多いです。材料の面でも、技術の面でも。
この古民家再生事業は、予算が限られていましたので、保存・再利用する部分と新材で新築する部分のバランスを詳細に検討して、費用を最小限に押えた計画にしています。
古民家再生の場合、設計も約3倍手間がかかります。
・実測しながら既存の図面を描く
・使えるものと使えないものを見極めながら解体図・撤去図を描く
・新しく再生する建物の設計図を描く
・設計どおりにはいかない場合もあるので、施工しながら調整のための変更図を描く
市民の方に愛されるよい施設になるといいのですが……。
投稿者 MCAT : 2006年09月18日 15:36
MCAT様
実際に人が暮していらっしゃるところは、外から見るだけだと思うのですが、
(http://www.kazabito.com/machiya/030609tonda_bayashi.html)
杉山家住宅のように、資料館のようになっていて、中を見ることができるところもあります。杉山家住宅は、シンプルで力強い家に感じ、ちょっと住んでみたいなあと思う家でした。
普通の人が見に行くと、小さい区画なので物足りないかもしれません。
(http://www5d.biglobe.ne.jp/~heritage/←音楽が鳴ります。)
父が棟梁さんやろなあと言っていた、宮大工の方は、連れの方がおっしゃっていたのですが、休日によく、お城等を見に行くそうです。軒の下から、窓から、いろいろなところを見ていて、同じものを見ても違うんだなあと感心しました。MCAT様もそうではないかなあと思います。
富田林の寺内町は、自治都市だそうです。昔の人にとって、交通の便が悪いということは自治都市を作らなければいけないほど大きなことなんだと、実際に行ってみて思いました。
PLは「パーフェクト リバティー」なんだと駅で知りましたが、富田林は、野球のPL学園や、花火で有名だと思います。
投稿者 一口カステラ : 2006年09月19日 21:53