2007年01月13日
幻のマックノート彗星
この数日,ある彗星を一目見ようと探し続けていました。その彗星の名は,「マックノート彗星(C/2006 P1)」。2006年8月にマックノート氏によって発見された新しい彗星です。発見された時は17等級という暗さだったのですが,今年に入ってから明るさを増してプラス1等級となっており,一時はマイナス10等級まで明るくなるのではないかと言われていました(結果的にはマイナス2等級程度でしたが)。
この「等級(等星)」という星の明るさの単位は,下の絵に示すようにマイナスになるほど明るくなります。全天で一番明るい星(恒星)でもシリウスのマイナス1.46等級で,明けの明星や宵の明星として知られる金星がマイナス4.6等級ですから,マイナス2等級でもその明るさが想像できると思います。ちなみに,北極星はプラス2.0等級,満月はマイナス12.7等級,太陽はマイナス26.7等級です。なお,1等級違うと明るさは約2.5倍違います(例えば,金星とマックノート彗星の明るさの差は,2.5の2.6乗で約11倍)。
さて,こんなに明るい星なのに何故そんなに探し続けていたかと言うと,見える位置があまりにも低いためと,太陽にものすごく近いためです。下の絵は,私が彗星を探す目安に書いたものです(出典は「ステラナビゲータver.8」)。日の出直前と日の入り直後の2回チャンスがあるのですが(絵は日の入り直後のもの),どちらも空が明るい上に彗星の高度がとても低い。絵に示してある10度という高さは,腕を前に突き出した時のこぶし1個分くらいの高さです。
ネットで情報を検索していると,「見えた!」「撮影に成功!」などという喜びの文字や映像が全国で躍っており,仙台市天文台からも「白昼に捉えた!」などという映像が紹介されていて,私にも見える可能性はあると励まされる思いでした。でも,朝夕の犬との散歩をこの時間に合わせ,犬は下を,私は上を眺めながら歩いていましたが,結果的にこの彗星を見ることはできませんでした。上の絵でもわかるように,彗星はだんだん高度を下げていっています。今日(1月13日)が太陽に一番近づく近日点なのですが,今日以降は高度の下がり方が急になり,北半球からは観測できなくなってしまいます。
「縁がなかったな~」と残念ですが,まだ楽しみが尽きたわけではありません。北半球からは今週いっぱいくらいで見えなくなりますが,近日点通過後は南半球で高度を上げ,もしかしたら大彗星になるのではないかとも言われています。この彗星は軌道が双曲線を描いているため,二度と太陽に近づくことはなく,これが最初で最後の出会いとなります。もしかしたら,オーストラリアあたりから美しいニュース映像が届くのではないかと期待しています。
というわけで,一番上に掲げた写真はマックノート彗星を探し続けた西南西の空です。もちろん彗星は写っていませんが,彗星は見えなくても美しい夕空を堪能できたことに感謝です(左半分に見えるネットは,東北楽天ゴールデンイーグルスの2軍グランド)。
投稿者 watanabe : 2007年01月13日 20:12
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コメント
ひよこさん、天文も得意なんですね。私は高校のときに地学を勉強しましたが、いまいちというか、さっぱりでした。星自体は好きなんですけどね。
彗星、見られなくて残念でしたね。「こぶし一個くらいの高さ」の意味がわからなかったです。
写真は空が高くて雄大ですね。モノトーンに近い色彩に、薄いブルーからオレンジに変わっていくところが素敵です。下の絵はこれに似ていますね。
投稿者 shiratori : 2007年01月14日 17:42
そうですね,天文は子供の頃から好きでしたが,地学の類は大人になってから興味がわくようになりました。白鳥さんご指摘のように,絵に描いた空の色は,実際に見る空の色に合わせました。白い彗星が明るいオレンジの光の中ではどれほど見えにくいかを実感するためでもあります。
「こぶし1個分」の意味は,以下のとおりです。まず,地平線に向かって立ちます。自分の腕を前に突き出してグーを作ります。腕の下のラインが地平線と同じ高さになるように位置を調整します。グーにしている手の上のラインは地平線よりも当然上にありますよね? その位置が10度です。その10度の位置からグーを1個分ずつ上にずらしていくと,だいたい9個目で頭上にきます。つまり,地平線から頭上までが90度あるということです。これでどうだ???
投稿者 ひよこ : 2007年01月14日 19:38
「こぶし1個分」ばっちしだぜぃ!誰かに教えたろ。じゃなくて、教えてあげましょう。
ひよこさん、よくわかりました。ありがとうございました。
投稿者 shiratori : 2007年01月15日 18:38
こぶし1個分,「ばっちし」ですか。良かった良かった。自分がわかっていることってわかり過ぎていて,他人に説明するのに適当になってしまいますね。ごめんなさい。しかし,絵で描かずに言葉で説明するのって難しいですねー。
投稿者 ひよこ : 2007年01月15日 20:20
マックノート彗星、昨日の朝のニュースで出てました。ひよこさんの絵とそっくりな写真がでていましたよ。
ブルーからオレンジに変わる空に、白い尾を引いて流れていく写真でした。もう北半球では見られないっていってました。
絵がそっくりだったので、びっくりしました。
投稿者 shiratori : 2007年01月17日 13:05
白鳥さん,ほんとですか。そのニュース仙台でもやっていたのかなあ。見逃しました。残念。絵はそっくりでしたか? 基本的には「ステラナビゲータ」というソフトで彗星の見える位置と時刻を確認しましたが,空の色は,いつも見る朝の明るさを自分なりに再現して「こんなふうに見えるだろうなあ」と想像で描きました。そっくりで嬉しいです。
投稿者 ひよこ : 2007年01月17日 23:30
絵は本当にそっくりでしたよ。すごいですよ。
彗星はニュースの写真ではちょうどオレンジ色に吸い込まれていくところでしたけど、真っ白くて尾がついていて、オレンジの中にあってもはっきり映ってました。
朝のNHKのニュースで見たので、仙台でも放映されたと思います。アーカイブがあるといいんですけどね。
投稿者 shiratori : 2007年01月19日 12:59
白鳥さん,ありがとうございます。NHKアーカイブ調べてみます。でも,白鳥さんの文を読んで頭の中のイメージが固まりました。実物を見ても「やっぱり」になりそうです。それでももちろん見たいけど。
投稿者 ひよこ : 2007年01月19日 20:23