【活動報告】シンポジウム2020「SDGs世界の課題と女性技術者」-a new life with covid-19-

 今年から5年シリーズで、「SDGs世界の課題と女性技術者」について知見を広げるためのシンポジウムを計画しています。
 第1回目は、コロナ禍とその先を見据え、「a new life with covid-19」と題して講演等を行いました。台湾・日本からゲストをお招きし、当会として初めてのオンラインでの開催となりました。

  • シンポジウム2020
    「SDGs世界の課題と女性技術者」-a new life with covid-19-
  • 日時:2020年8月29日(土) 20:00~22:00 
  • 場所:オンライン開催(Zoom利用)
  • 活動形態:主催
  • 参加者数:日本19名、台湾11名
  • その他:英語で実施し、主要な内容は同時通訳あり
    (Zoomのチャットで日本語訳を表示)。
  • 内容:基調講演2題、グループ別ディスカッションと報告

主催者挨拶(理事長:宮地)

講演1. 微功商行有限公司 宋(そん)順蓮 藥師 氏(40分)
 「コロナの封じ込めに成功した台湾の政策とその考察ほか」

   台湾で何が起きたのか、その政策と技術の提携、ワークスタイルの変化、
   などとともに、宋さんの専門分野である薬学の視点からの考察。

講演2. BMDesign研究所主宰 永合(なごう)由美子 氏(20分)
 「時計の針は進んだか?
  ニューノーマル、ニューローカル、ニューリーダーの時代」

   コロナの影響、生活、地消地産、小さなリーダー等について

グループ別ディスカッションと報告(40分)


講演内容とグループディスカッションの概要は以下のとおりです。

主催者挨拶(宮地)
 皆さんこんばんは。ご参加ありがとうございます。特に台湾のメンバーはAPNN開催の準備でお忙しい中の参加に感謝します。
 今回はオンライン上で台湾の方々をお迎えできてうれしいです。台湾の方々はAPNNで会議が有意義なものになるように友情と情熱を私たちに示してくれています。
 コロナ禍が始まったとき台湾の水際対策やその後の感染拡大を防ぐための手立ては見事でした。一方日本ではオリンピック開催を期待したためにすっかり対応が遅れてしまいました。
 現在台湾は感染者0名を維持しているたった一つの国です。台湾ではIT技術が政治とうまくつながりました。基調講演で宋(そん)さんから詳しく教わりましょう。
 日本の状況については、永合さんよりスピーチして頂きます。
 質問がございましたら、チャットでお願いします。
 それでは、よい時間を過ごしましょう!

シンポジウム参加者1シンポジウム参加者2

講演1. 微功商行有限公司 宋(そん)順蓮 藥師 氏(40分)
 「コロナの封じ込めに成功した台湾の政策とその考察ほか」

 台湾で何が起きたのか、その政策と技術の提携、ワークスタイルの変化、
 などとともに、宋さんの専門分野である薬学の視点からの考察。

◇ 私のキャリアについて(微功商行有限公司の紹介)。
 1997年に会社をたちあげました。
(オフィスや活動の写真を紹介)水曜のお昼にはみんなでヨガをしています。
コロナ後はマスクをつけてヨガをやっています。
 勤務時間が自由なため、女性が活躍できる会社です。
 テレワーク利用も普通です(Eメールやスカイプ等)。「事業の継続性」では、クラウドで安全性を確保することが大事です。クラウドで問題が発生すると、すぐに何らかの対応をしてもらえるようメンテナンスサービスの提携を結んでいます。
ただし、ずっと家で働くことは推奨していません。直接会って話すのはとても大切です。

 (コロナ感染が世界に広がった頃の)2020年3月にはまだイベントに参加していました。
「ジーンズをリサイクルするイベント」、「助産師を助けるためのイベント」等。
 当時は、マスクをつけたり、つけなかったりと場合によっての対応でした。
 ウェブを活用したイベントはコロナ流行以前でも実施していました(直近では昨年11月)。
 2020年4月以降の計画は延期になりました。

◇ 台湾のコロナ対応についての紹介  (参考動画:発表資料より)
 ・ Quick film   (台湾でのコロナ対応の概要、約2分) 
 ・ Dashboard   (世界の動向)
 ・ Taiwan data   (台湾のデータ(2020年8月現在))     
   陽性や死亡数の情報は、死亡7名、487名が陽性
   また、陽性者の性別の割合や、年齢が示してあります。

◇ 台湾でのマスク騒動と政府のきめ細やかな対応について
 台湾では2月6日以来、薬局でマスクがもらえますが、パンデミックの最中、マスクの色は選べませんでした。しかし、一人の男子学生が「薬局で配布されたピンクのマスクは付けたくない」とトラブルに。すぐに、政府関連の男性がピンクのマスクをつけて「マスク着用の重要性」を大々的にプロモーションするということがありました。
 マスクは大部分が中国からの輸入(データ:中国に193万枚のマスクを輸出し、4億枚のマスクを中国から輸入)していました。
 配布開始の頃は、2週間ごとにマスク2枚を配布、3月5日から3枚、と増えていきました。4月9日からは9枚。今でも2週間ごとに9枚の配布です。足りなければ1枚18円ほどでマスクが買えます。
 マスクを買うために薬局に長蛇の列ができ、長時間並んでも少ししか買えなかったりしたためか、薬剤師に対して悪い印象を持つ人が増えました。そのため、政府が「いつどこでマスクが買えるか」きめ細かな情報を提供し、誰でもスマホなどで見られるようにしました。

台湾の天才IT担当大臣 唐鳳(オードリー・タン)氏について紹介
 8歳でプログラミングを習得(独学)。学校ではなく、お母様がホームスクールで育てました。16歳から働いたITビジネスを33歳で引退。
 そして、2016年35歳でIT担当大臣となり、マスクの在庫管理情報システムなどを作製。政治にかかわることは、チャリティーと同じだと言っています。
参考:タン氏の「蒸しマスク」の動画(日本語版)

◇ ITを利用した患者の行動履歴データ等の利用について
 2003年にはSARSを経験し、その経験からIT活用の施策も実施されています。
台湾の健康保険加入率は99.8%。
 健康保険IDと旅行履歴を連携させたシステムが運用されており、患者の旅行履歴を追跡することができます(毎日2時に情報を更新)。
 全ての情報はオープンで平等に資源が分配され、入国の管理もタイムリーでした。

◇おわりに「最近のできごと」など
 2020年8月17日には新しい規則ができました。
 8つの場所(病院、公共交通機関、スーパーマーケットや大規模店舗、教育機関、大規模イベント会場、教会・お寺、社会活動)に行くときには必ずマスクをつけなければなりません。反則すると罰金があります。
 
 テレワークが主流となりましたが、やはり対面での仕事も必要です。
 家で働くと時間管理が難しくなります。私は、延々と仕事をしていて、帰宅した夫からクレームが出たこともありました。
 今回、詳しく調べたところ、地域の薬局が保健所のような役割を持つという事を学びました。

シンポジウム参加者(台湾)
(写真)シンポジウムへの台湾からの参加者全11名です。

講演2. BMDesign研究所主宰 永合(なごう)由美子 氏(20分)
 「時計の針は進んだか?
  ニューノーマル、ニューローカル、ニューリーダーの時代」

  コロナの影響、生活、地消地産、小さなリーダー等について

◇ 死亡者数から考えるコロナのリスクについて
 参考資料:藻谷氏のセミナーから8月までのコロナでの死者数
  (人口100万人当たり)
 Swedenでは都市封鎖対策は取っていませんが、死者数は他のヨーロッパの国と変わりません。中国は初動対応が良かったので、死者数の増加ペースが抑えられています。日本の死亡者数は少ないですが、死者数の増加ペースが一定のままで感染の収束が遅れています。
 日本での死亡理由をみると、コロナでの死亡者数はそれほど多くはなく、現段階ではインフルエンザ以下のレベルです。自殺、肺炎、癌の方が死亡者数は多いです。また、高齢化に従い老衰での死亡が増えています。

◇ コロナ対応としてのリスク管理について
 従来から提案されてきた「リモートワーク」が、コロナ対応で増えました。
 “生活の見直し”が迫られています。キーワードは、「ニューローカル」と「ニューノーマル」です。
 「リモートワーク」は意外に良いです。満員電車に乗らなくていいですし。
 ただし、日本のIT利用は遅れており、労働生産性も低いです。「マスク不足対策」でも、台湾はIT利用ですが、日本は「アベノマスク!!」でした。
 日本は今までの習慣から変わるのは難しい(慣性力が強い)ですが、オンラインが普及してきて、学び方も変わってきています。このシンポジウムも新しい学び方です。オンライン利用での活動の可能性は今後も広がることでしょう。

◇ ニューローカル(島根県を例にして)
 クラスター(集団感染)は人口密度が高いところで発生し、人口が東京に集中することは危険です。リモートワークが増え、東京からは離れてUIターンを希望する人が増えています。若い層はワークスタイルを変えようとするでしょう。
 「(女性の就業率が高く、合計特殊出生率も高い)島根大好きです!」地方では過疎化が問題です。地域で子育て支援をしています。
 「関係人口」という、単なる観光客ではなく、地域に深く関わる人を増やそうとする取り組みもあります。
 副業を許可する会社も増えてきました。これも良い傾向ととらえています。

◇ おわりに(ニューリーダーへの思い)
 コロナ禍では世界の女性リーダーの活躍が顕著でした。自身の言葉で語られるスピーチが共感を呼びました。
 日本では諸外国と比べて女性リーダーはあまり増えていませんが、新しい時代では、小さいリーダーが多く現れ、情熱をもって、自分の言葉で思いを伝えることを期待します。
 最後に、「Beforeコロナには戻らない」。前に進みましょう!

グループ別ディスカッションと報告(40分)
 参加者全員を6つのグループに分け、各グループで講演内容をもとにディスカッションを20分間行いました。その後、全員参加の画面に戻り、各グループのディスカッションの概要をグループの代表者に発表していただきました。
 相互通信の負荷を考慮し、音声や画像をOFFにしての参加者もいたので、グループディスカッションの参加人数は1グループ2人~5人でした。 

◇グループディスカッション報告より
 宋さんの会社の多様な働き方について素敵だと思いました。コロナ禍で女性は更なるリスク管理が必要になると思うので、「在宅勤務での労働管理」など台湾の先進事例に学びたいです。
 SARS(2003)では関西・四国を観光した台湾人医師が帰国後にSARSに感染の疑いで隔離された事例があり大阪は慌てていました。当時の恐ろしい緊張感を思い出しました。
 台湾政府のコロナ対策の早さ(渡航禁止)やきめ細やかな政策(マスクがいきわたるように枚数制限での配布、IT活用での情報提供など)にとても感心しました。
 感染対策として、「これからもマスクの着用は重要でしょう」。

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