【特集】エンジニア ジェンダー紀行 国巡り③

   あらためて、日本は、リケジョ後進国?

                                     沼澤朋子

 

 今年度から、国際部が「エンジニア ジェンター紀行 国巡り」として特集を始めたのは、日本国内だけでなく、世界の状況も知っていただきたいという趣旨からである。

 とはいうものの、私たちは、日本の現状についてどれくらい把握しているのだろうか。(公社)日本技術士会に於いても、女性会員の割合は増えてきているものの、わずか2%にすぎない。ノーベル物理学賞受賞者の女性割合が1.8%(222人中4名)であることに匹敵する。そこで、3回目ではあるが、改めて日本の現状をまとめておく。

 まずは、基本となるのは世界経済フォーラムによるジェンダーギャップ指数(The Global Gender Gap Index:男女平等の度合:以下GGGIと呼ぶ)である。2022年度は、日本の順位は146カ国中116位、主要7カ国では最下位である。対象国の増減により多少変動するものの、このポジションは変わらない。

 詳しい内容は省くが、このGGGIの順位は、政治(139位)、経済(121位)、健康(63位)、教育(1位:但し、1位の国は26カ国ある)の4分野のスコアからなっている。この結果からみると、日本は、せっかく女性が高等教育を受けているにもかかわらず、経済的な恩恵や政治への参画の機会が少ないとみることができる。教育を投資と見るならば、非常に残念なことであるが、女の子への投資はROI(Return On Investment:投資利益率)がよくないと言える。女性本人の経済的な基盤が脆弱であると女性の自立が難しくなり、男女格差の悪循環が生まれる。

 しかし、教育が1位なのに、その後のリターンとなるはずの政治、経済の順位はなぜ良くならないのだろうか。この教育のスコアには表れないが、理学部・工学部・政治経済学部などの分野への女子学生の進学率が少ないという問題もある。この記事を読まれているみなさんは、理系出身が多く実感として、理系分野で女性が少なかったという経験をお持ちであると思うので、詳細なデータはリンクを見ていただくが、この割合はなかなか改善していない。

 なぜ、理系分野の女性が増えないのだろうか。国立女性教育会館による新入社員の5年間を追跡したパネル調査の調査研究が公開されており、まとめの考察もある。文理別、男女別の意識の変化が調査から透けて見える。文理別女性社員についてのデータでは、入社当時は理系の満足度が高く、3年目になると文系の満足度が高くなっている。このデータをもとに、NPO法人「女子中高生理工系キャリアパスプロジェクト」の企業交流会で、オンラインの意見交換を行った際には、理系女性は能力に見合った処遇を行う余裕のある日本企業が多いことも女性のキャリアパスが国際的な視点からすると道半ばなのではないかという意見もあった。このような意見交換の場では、女性の比率が高い企業の方が、キャリア形成のリーディングカンパニーが多いと感じる。

 女性技術士の会の多くの会員も感じているように、まずは、理工系女子学生を増やすことが、女性のキャリアパスを強靭にする第一歩ではないだろうか。文部科学省も他国と比較し、理工系女子学生の割合が低い状況を改善するため、様々な取り組みを開始している。東京工業大学の女子枠入試もその1つである。大学の制度ではないが、女子数学オリンピックというもののある。このような取り組みが往年の科学技術創造立国日本を取り戻すきっかけとなるとよいと思う。

  今年度は、男女雇用機会均等法施行年(1986年)に入社した4年生学卒の女性が60歳定年を迎える。この世代の女性技術職は、いまから考えるとあり得ないような差別的な扱いもあった。この過渡期の世代の努力もあり、男女共同参画が次の世代へ引き継がれ、新しい時代に進んでいると感じている。

コメントは受け付けていません。